近年の少子化で、思うような吹奏楽や金管バンドのフル編成が組めず、苦労している団体(小学校・中学校・高校)も少なくないと思います。当団も、結成2年目に器楽合奏団から編成を拡げる際、吹奏楽・金管バンド・ビッグバンドの3つを比較検討した結果、人数と楽器の問題からビッグバンドの道を選んだという経緯があります。
ここでは、吹奏楽・金管バンドからビッグバンドに移行して、少ない人数でも充実した活動がしたい、というバンドのために、ディレクター視点、アレンジャー視点で気づいた事を、書き綴ってみました。(2017年6月 代表)
ビッグバンドの標準編成は17名ですが、
【17人編成】
2 A.Sax. / 2 T.Sax. / B.Sax. / 4Trp. / 3Trb. / B.Trb. / Guit. / Piano / Bass / Drs.
グレード1〜2の出版譜(Hal Leonard社のEasy Jazz Ensembleや、Alfred社のYoung Jazz Ensemble、First Year Chartsなど)では、4番トランペットや4番トロンボーンがオプション扱いで省略可能になっていることが多いため、そのような楽譜は14人編成でも演奏できます。また、大抵の場合、ギターも省略できます。さらに、テナーサックス2番がオプションの場合は13人でも演奏できます。
ちなみに、アメリカ式グレード2は、トランペット最高音がソであるなど、日本式グレード3と同程度のようです。
【14人編成】
2 A.Sax. / 2 T.Sax. / B.Sax. / 3Trp. / 3Trb. / Piano / Bass / Drs.
それよりも人数が少ない場合でも、ピアノなどのコード楽器が和音を補うため、コードの構成音が足らずに音楽的に不完全になる、ということはなかなか起こりません。
さらに、4管 + リズム・セクションなどのコンボ用の楽譜も出版されています(Hal Leonard社のEasy Jazz Comboなど)。ただし、吹奏楽におけるアンサンブルのように、個々の奏者の負担が大きくなります。
リズム・セクションの3人が揃うと、それだけで完成された音楽が生まれます。これは、吹奏楽や金管バンドでは考えられないことです。逆に言うと、それだけ重要な役割を担うパートであるということになります。責任感と音楽性にあふれるメンバーを担当させましょう。
【ベース】
現在のパートを問わず、音感が良く、最も音楽的に信頼できる部員にベースをお願いしましょう。最初にエレキベース(ジャズベース)とベースアンプを用意します。KJEの場合は、初心者用の1万円台のベースを最初の2年間使い倒しました。ベースアンプは200W以上あれば、小さな公園での野外演奏、200人程度の小ホールでの演奏会などに十分使えます。また、ネックが短いショートスケールの楽器を用意すれば、小学4年生でも大抵の場合弾くことができるようです。
【ピアノ】
小さい頃から現在までピアノを習い続けている部員がいれば、迷わずピアノをお願いしましょう。グレード1〜2の出版譜であれば、コードネームが分からなくても弾けます。ピアノがない野外演奏などのために、61〜88鍵のキーボードと65W以上のアンプを準備すると良いと思います。
【ドラム】
明るく元気で伸びしろのあるパーカッションの部員にお願いしましょう。複数いる場合は、タンバリンやコンガなどのラテン・パーカッションを適宜加えながら、交替で担当させます。吹奏楽の現場では、ライド・シンバルとクラッシュ・シンバルの区別がない場合も多数見受けられます。ジャズはシンバルワークが命ですので、質の良いライドシンバルを右手側に必ず用意してください。
完全にビッグバンドに移行する計画の場合は、これらの楽器は徐々に縮小していきましょう。グレード1〜2の出版譜の中には、これらのパートがオプションで用意されていることもあるので、共存させることも不可能ではありません。その場合の注意点をまとめました。
【フルート】
オプション・パートが用意されていない場合は、リード・トランペット(1番)の1オクターブ上を重ねるように、写譜すると効果的です。具体的には長2度下げて1オクターブ上げます。8va記号は使用しません。ピッコロは特殊な場合以外使わない方が良いでしょう。
【クラリネット】
トランペットの譜面をそのまま吹くのが最も簡単な方法ですが、同じリード楽器であるサックスに重ねることを推奨します。アルトサックスであれば、完全5度下に移調します。テナーサックスであれば、1オクターブ下に移調します。
【フレンチホルン】
トロンボーンの譜面を完全5度上げて写譜すると良いでしょう。
【アルトホルン】
金管バンドのEs管(別名:テナーホルン)の場合は、アルトサックスの譜面を読みます。ただし、上のラ以上の加線の付いた音の場合は、吹かない方が無難です。
【ユーフォニアム】
トロンボーン1番に重ねた方が良い場合と、4番に重ねた方が良い場合があります。また、機動性を活かして、テナーサックス1番を1オクターブと長2度下げてヘ音記号に書き直して吹くこともできます。その場合、上のソ以上の高い音の場合は、吹かない方が無難です。
【チューバ】
ビッグバンドのベースラインは、通常ベースが1人で担当しますので、チューバを重ねるのは得策ではありません。重ねると、音が濁ったり、グルーヴが重くなったりしてしまいます。この場合は、バストロンボーン(4番トロンボーン)に重ねると良いでしょう。ただ、グレード1〜2の譜面だと、トロンボーン4番がバストロンボーンを想定していない場合があるので、音が高すぎて無理が生じる場合があります。ちなみに、アレンジを変えて、スーザフォンに持ち替えて、ディキシーランド・ジャズ風にベースラインを吹く、という奇策もあります。
【鍵盤打楽器】
迷わずヴィブラフォンを入れましょう。ブラスやサックスがユニゾンの時でもソリの時でも、ヴィブラフォンはよくブレンドします。グロッケンシュピール、シロフォン、マリンバだと、なかなかホーン・セクションのニュアンスに合わせことができません。譜面がない場合は、1番トランペットか、1番アルトサックスを移調して重ねると効果的です。ミディアム・ハード・マレットを使って音のツブを出していきましょう。